2008.07.16 Wed
そう 今日はお祭りね
窓辺で
重く淀んだ空気が
生暖かく湿った夏の風が
わたしの肩に乗り上げて 知らせる
風鈴の音色は すこし重苦しい
通りを歩く子供たちは
麻の浴衣をひらひらさせて
そう 今日はお祭りね
真っ赤に熟れた飴を手に
ふくらんだザラメを手に
無邪気な叫び声をあげている
そう お祭りなのよ
朱や黄色の浴衣のなかに
ひとりだけ 真っ白いシャツが居た
彼がぶら下げたビニル袋のなかで
あかい魚が たくさん泳いでいる
お祭りだというのに
彼の目は まっすぐに
何処か遠く 遠くを見つめている
首筋から 浮き出た背骨を通って
彼のからだは 何処までも真っ直ぐ
何処までも真っ直ぐ 続いている
何もかも舞い上がって
ばあ様も じい様も
あすこの学校に通う女学生も
煙草の好きな兄さんも
田圃に寝転んでいたあのひとも
舞い上がって
お祭りだというのに
彼は
ビニル袋のなかに
魚を閉じ込めて
真っ直ぐ 立っている
袋のなか
赤い魚が一匹
横向きになって
動かない
彼も 決して動かない
そう 今日はお祭りね
人間が
何も知らずに
おやしろを囲んで
神輿を担いで
踊り 舞い上がり
一晩だけ 何かに囚われる
ほの甘い狂気が
訪れる
そう 今日はお祭りだから
濁った目玉の魚のことも
死んだ魚のうろこの
気持ちが悪いほどの艶めきも
彼の他には 誰も知らないのよ
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